2011/07/26
遠山サキ / Saki Toyama
7月初旬。
祖母がバスと飛行機を乗り継いで、私達が住んでいる高尾へ足を運んでくれました。
そして祖母が生活の中から身につけた知識の一つ、カエカ(糸作り)を地域の方々と学びました。
この映像は、その時の様子を海沼武史氏が撮影・編集したものです。
祖母が来る前に、私は海沼氏に「歌を録音して欲しい」と、伝えていました。
記録としての意味もありましたが、彼の眼を通して祖母がどのように映るのか興味がありました。
昭和一桁生まれの祖母は、まだアイヌ語が生きていた頃の記憶を残している数少ない長老の一人。
沢山の苦労話や歌は、涙無しには聞けませんでした。怖くて聞きたくない時もありました。
けれども今は、全国各地から祖母の話を聞く為に沢山の人々が遠く北海道の浦河まで訪れては去っていきます。
祖母は、そんな人々を暖かく迎えて、ゆっくりと親身になって話を聞いていました。
幼い頃の私は、その横でその風景を静かに眺めていました。時には嫉妬もしたし、私もあれこれ教えて欲しいこともあったけれど、それよりも同じ時間を過ごしていることの方が嬉しかった。
大人になってから、一人で歌うことが多い私は、「祖母は一人で歌う時どんな想いで歌うのだろうなぁ」と、ふと思いました。
そして今回、無理を言ってお願いしたのです。疲れていたのだろう、眠りから醒めた祖母は「お前に残していくからなぁ~」といって、快く引き受けてくれました。本当に、それは嬉しい一言でした。
今頃は、遠く太平洋の向こう側で歌を歌っているのでしょう。
ku kor huci ソンノイヤイライケレ~ありがとう。
それから、緊張しながらも苦心して制作して下さった海沼氏、ありがとうございました。感謝します。
Toko Emi
2011/07/04
饗宴 / Symposion
先週の日曜日、我が家に蜂須賀公之がやって来た。
彼のことだから、また料理を作るのだろうと予感し、最近、中村明博の紹介で知り合いとなったフラワーコーディネーターの美之さん、野草に興味があると聞いていたので、ぐぐっと誘ってみた。
が、彼女はその日、かなり体調が良くなく、「せっかく誘ってもらったのに、、、ごめんなさい」と、電話口で丁寧に断ってきた。
「これは縁が無かったのだな」と、僕は蜂須賀公之からの電話だけをぶらぶらしながら待っていた。
彼がウチに遊びに来るのは、1年ぶりとなる。その時の模様は、勝手に動画にした。
1年に1度しか会わない、会えない男。いいねえ、そんな関係も。お互い、もう十分知り尽くしているからね、このぐらいの距離とスペースが、ふふふ、美しいのだ。
突然、電話が鳴った。
なぜか、美之さんからだった。
「どうしたの?」
「いま、高尾に居ます」
「って、あれ?カラダは大丈夫なの?」
「この機会逃したら、次は無いかなと思って」
彼女は2時間近くかけ、ウラ高尾にやって来ていた。
思い切りのいい人、度胸のある人って好きだな。
それは、多分に自分の小ささを、きちんと受け止めているから、知っているからだ。
ここだけは逃げちゃいけない、ここは無理しなきゃ、という野生的な、根源的でモダンなセンサーが働いている人、そうあろうと努めている人って、素敵だね。
自分の弱さをしかと受け止め、認めた人にしか、何かを表現する資格はない、いや、作家には成れないと思うんだな。
別にモノを表現する側などに立たなくても良いし、表現者が偉いわけでもなんでも無いが・・・。
みーんな、小さいのだし、弱っちい。だから、美しさを、この目で見たいし、顕わにしたいんよ~。
The image of the poet's in the breeze
Canadian geese are flying above the trees
A mist is hanging gently on the lake
Our house is very beautiful at night
by Lou Reed