この世界に「美しい花」というものは存在しない。しかし、美しい花を見出すことのできる生命体はいる。
人間だけが、花を見て「美しい」と感じる。
これはなぜか?
それは、人間の心の中に初めから〈美しい花〉が存在しているからだ。
同様に、この世界の「自然」とは、美しくもなければ醜くもない。
四季折々の営み、その表層的な変化のある断面を取り出し「美しい」と感じることはできる。が、そもそも自然界、その総体とは弱肉強食と縄張り争いがうごめく残酷な面をその内部に隠し持っている。
では、絵に描かれた〈自然〉とは何なのか?
絵に描いた餅はしょせん食べられないと、さも食べられる餅にこそ価値があり的な考えに縛り付けられている動物やヒトは多いが、絵、芸術とは本来犬猫には必要ではない人間種だけの心の食べ物であり、実は「自然」から心を取り出し、移り変わることのない源泉の美を、1枚の画布に、その聖性と歓びや神秘を抽出し、再生させることが出来る機能と役割を与えられたのは芸術家だけだ。
つまり「絵画」そして「音楽」によって、この自然界が初めて天上へと復活する。
だが、すべての人間が潜在的芸術家である。
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