2012/09/23

秘密の河 / mystic river


その川の名を、ひとは“小仏川 -Little Buddha River-”と呼んだ。
ふかい沢のむこうに、水の絨毯が
ヒカリと風が交ざり合う頃、ソレはぼくを手招きした。
「戻ってきてはだめだよ。もうすこし其処に」
いつも冷たく、黙りこくったカメラが
(ぼくの手のひらの熱を呼吸したんだな)
息づいて、「ソレをだれかに見せてあげればいいよ」
無常の時の流れに怯えながら
やがてぼくであることが消える瞬間の
先っちょの方で、優しくシャッターを切っていた。