その川の名を、ひとは“小仏川 -Little Buddha River-”と呼んだ。 ふかい沢のむこうに、水の絨毯が ヒカリと風が交ざり合う頃、ソレはぼくを手招きした。 「戻ってきてはだめだよ。もうすこし其処に」 いつも冷たく、黙りこくったカメラが (ぼくの手のひらの熱を呼吸したんだな) 息づいて、「ソレをだれかに見せてあげればいいよ」 無常の時の流れに怯えながら やがてぼくであることが消える瞬間の 先っちょの方で、優しくシャッターを切っていた。
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