精神病院の経営はリピーターによって成り立っていると言っても過言ではない。そこにご新規さんがぞろぞろ新たに仲間入りするのだから、商売として見たらコレ笑いが止まらない。
しかし実際、この精神科スペースに数多の無表情はあっても明朗な笑いはない。
精神病院の右肩上がりの成長率とは、我が国の経済効果にはまったく寄与せず、せいぜい外資系の薬品会社を潤すだけ。(しかしこんな感じで患者数が増え続けたなら、一体この先、我が国はどうなるんだろう?)
サイキアトリストでもクリニカルサイコロジストでも肩書きはどうでもいいから、「早く治せやー、この給料ドロボー!」と、ある看護師の嘆き。笑
そしてある快晴時、アホの三浦(仮名)32歳が仕事中の僕に近づいて来た。
「カ、カ、カイヌマさん、いまそこを通った人に僕は税金ドロボー!って言われました」と、無表情に愚痴った。
「あぁ、彼か……。よく見かけるよね。役所関係の人だよね」
やや哀しみを押し殺したような複雑な表情を浮かべ、小さく頷いた若き生活保護受給者。
「そりゃ、立場上、腹の中で思ってても決して面と向かって言っちゃ〜いけないコトバだよな。(笑)でも、それ事実じゃん!ハハハ」と僕。
さらに次いで「まぁでも、悪意があってそう言ったんじゃないから。とにかく疲れてんだよ、ストレス溜まってんだよ」と、50手前の国税によって老後は安泰万全の暮らしが待っている地方公務員をなぜか弁護していた。
合点のいかぬ顔をしながら聞いているアホの三浦。
皆、それぞれの立場から様々の不服、不満を抱き、本音を押し殺し生きている。時に漏れてしまうこともあるが、とにかく必死で、幸せになりたいと、アホの三浦だって同様、もちろん僕も御多分に洩れずこの世にしがみつき、生きている。
一見、公平に、死を待つだけの何とも奇妙なこの世界。
だが、こんな説もある。「きみが見ている世界とはきみの意識、思考内容、欲望的信念、心の一部が作り上げた(想像)世界だよ(だから実在していない)」と。
さらに「この世界の存在証明は、きみの身体と知覚の連動によるものだけれど、そもそもその身体もきみが世界を存在しているような錯覚を起こさせる為に作り出された(妄想された)ものだからね」。
ってことは、アホの三浦も市民からのクレームに酷く怯えている公務員も、全員僕の一部であり、この世界そのものが(本人はあまり自覚出来ていない)自虐的な妄想に起因する、と。
だからもうそろそろ、この銀河世界劇場を作り出した意識本体まで遡行し、この意識そのものを観照しうる視座(気づき)へと移行し、この意識そのものが実は夢のセントラル採掘場、張本人であった事を見抜くこと。これが、最期の落とし所。
Boys Meeting(2019年作)