2010/02/18
高橋竹山翁、観ていた風景 / Sir Chikuzan Takahashi
ある音楽、作品について、言葉で語ろうとすれば、ますますその音楽から離れてゆく。
言葉にならない戦慄、感動というものを、なぜ、言葉で語ろうとするのか?
恥ずかしながら僕も音楽家で、音による表現、その創造の魅力に取り憑かれ、20年以上も言葉のない音楽を作り続けて来たゆえ、言葉など、コトバ、など…。
オバンデヤスー。
翁は、舞台に上がり、演奏をはじめる前、決まってこう言った。
「おばんでやす」
今から35年程前、うちのカミさんがまだウラワカキ中学生だった頃、彼女はその郷里・高知にて翁の生演奏を聴いている。2時間近く、照明はトップから一灯、そして奏者たった一人…。
ロック音楽ばかりを聴いている年端も行かぬうら若き乙女の背筋をゾッとさせたという。連れて行く親も親だが、感涙するカミさんもカミさん、そして翁の演奏…。
三味線とは何か?
翁が弾く津軽三味線は異様なほど明るいが、弾きながら、奏でつつ、盲目の名人は一体何を、その内側で、一体どんな風景を観ていたのか?
盲目の瞳で、風景が、銀粒色の瞬きが、きらきらと流れて逝く。が、僕の中で明確な「像」を結ばない。
樺太アイヌの楽器トンコリ、その数少ない継承者の一人である千葉伸彦(敬称略)は三味線も弾くらしい。今度お会いしたときにでも、三味線という生き物の魅力、その内なる「風景」について尋ねてみようかしら・・・。
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