現象の世界はしばし人間に本来的に備わっているであろう絶対的な自由への自覚を抑止する働きをしますが、芸術行為、芸術表現、アートというジャンルに特別な意味や価値が生まれるのは、人間の全的な自由を想起するために機能しようとする瞬間だけです。
アートとは、究極的にはこの現象世界が無であることを告げますが、人間は個々の身体を持ったという夢を見ている心でありながら、その本質は神(真善美)の一部であることも告知します。
録音された音楽は、ただ一回限りのライブ、コンサートでの体験とは異なり、何度でも再生可能です。リスナーの主体性によってその都度蘇り、絶えず新たな気持ちでその音楽を目撃することを可能にします。
まるで自然界の四季折々の変化や、世界の表層上の移り変わり、時の流れというものを無視するかのように……。
録音物による音楽鑑賞もまた、もう一つの時間の入り口となり、五感を超えた世界を垣間見せ、真の自己との出会いに繋がる予感を表出することが可能であると、これまで音楽を作って来ましたが、それは多分あらゆる音楽家たちに与えられた夢なのです。
内なる閃光 music is(1994年作)
0 件のコメント:
コメントを投稿